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ハワイのパスカルと「サーマクール」の評価

去年の秋、東京で開催された学会発表で「アンチエイジング治療」の講演を行ったところ、私はハワイから招待された美容外科医アンソニー・パスカル氏を紹介された。パスカル医師の研究課題は脂肪分解注射を中心とした「メソセラピー」の話である。彼は飾り気のない明るい人柄で、私は会った瞬間、「この人とはウマが合う」と思った。各々の講演が終って、一息ついた私たちは会場の外のレストランで、最新の美容外科医療(整形・エステ)について熱心に語り合った。「こんな時間ですね」と時計の針に目を移したときは、その日の発表行事が終了する時間が近づいていた。そのとき、私はかねてより気にかけていた「サーマクールの評価」をめぐって彼の意見を聞いてみた。「サーマクールは痛みを感じるため、患者さんには評判がよくないのですが、どう思われますか?」「麻酔を使えば痛みは平気だよ。サーマクールは本当にいい装置で、私のクリニックでは大人気さ」とパスカル医師は気軽に答えてくれた。私は耳を疑い、「本当ですか?あの悪名高いサーマクールが、ハワイでは人気の的なんて!」と信じられなかった。パスカル医師は「それほど難しい話でもないさ」といった口調で、「顔の知覚を支配する神経を局所麻酔でブロックすれば、痛みはほとんど感じないで治療できるんだ」彼自身も治療を受け、頬のたるみも改善され、結果に満足しているというのである。……ナルホド。よくよく考えてみると、外科治療では、痛みのコントロールは麻酔しかありえない。麻酔なしでサーマクールを使うことは、麻酔なしで歯を抜くことに等しいわけだ。サーマクールも、外科医としてのスタンスで用いれば問題はないわけだった。ところで、パスカル医師曰く、「ニューヨーク近くの貧しいイタリア系移民の出身」で、医師になることを決意した彼は、ニューヨークにある大学の医学部を卒業し、形成外科医となったという。形成外科医時代はマイクロサージャリーーで、切断指の再接着などを行っていたが、それは私と同様なので、すっかり話が合った。その後は外科医として昼夜を問わない激務の末、美容外科医となり、ハワイにクリニックを開業した。彼は一般庶民の受けがとても良い医師であるという評判を後に他から聞いた。たしかに、美容外科医の場合、学究肌で理論武装するよりも、患者さんと同じ目線に立つことが必要であり、患者さんから得られる信頼も大きい。しかし、それは医師のスタンスというよりも、人柄に属する問題であるだろう。