白人の少年の側から見てみましょう。彼らはプレスリーやチャックーペリーのロックンロールにしびれた青少年の弟にあたる世代です。黒人音楽のカッコヨサは知っているけれど、でも、ホンモノのR&Bは、自分たちにはちょっと程度が高すぎる。高校でダンスがある晩には、地元の黒人バンドがやってきてR&B曲をやるのですが、体育館でガールフレンドと踊りながら、一緒になって歌うところというとやっぱり、「ルドーオーン、アイムーカミンー・ホールドーオーン、アイムーカミンー・」だったりしたわけです。
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この歌(I.Hayse&D.Poter作詞・作曲、66)をヒットさせたサム&デイブは、モータウンではなく、スクックスという対抗会社のアーティストで、ペースとブラス(ラッパ)の利いた、汗臭い感じのソウル音楽をやりました。イントロとサビのところに、「ラソミ」と「ミソラ」のテトラコルドが繰り返されます。ここで面白い現象が見えてきます。西洋を受け入れ、西洋的な土俵で列強と対抗していくことに国運を賭けた〈近代〉突入期の日本の施政者が学校の生徒に押し当てたうたと、〈近代〉崩落期−西洋文化の覇権が崩れ、異文化の諸要素がエキゾチックなものとしてでなく、退屈な主流文化に対する、より“進んだ”オルタナティブとして取り込まれていく時代のアメリカで中流層の少年たちにウケたうたとが、音階だけを比べればほとんど一致するのです。この一致が、60年代後半から徐々に始まった日本のうたの脱近代の動きに、とても重要なはたらきをすることになりますが、その詳しい話は後にまわすとして、ここではまず、過去の日本でヨナ抜き音階がどんな情感のうたを立ち上げていったのかに注目することにしましょう。